それでも、彼の自己満足がせめて今この時だけでも幸福なものでありますように。

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それでも、彼の自己満足がせめて今この時だけでも幸福なものでありますように。

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こんにちは! 男子ーズきってのものぐさ男子、ケンタローです。

イマイチ時流に乗れてないこのレビューコーナー、今回ご紹介するのは

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。9/渡航

アニメ第2期が決定し、来週には新刊6.5巻が発売される人気作品。

平坂読先生の「僕は友達が少ない」を始めとした「残念系ラブコメ」の一つであり、各所に散りばめられたパロディ、作者の出身地であり物語の舞台でもある千葉のローカルネタとはうってかわった「苦い」展開が特徴です。

今回は現在最新の9巻を簡単に紹介していきたいと思います。

聖なる夜。届かぬ想い、かなわぬ祈り
一つの依頼を通して、奉仕部が手にしたものは——

8巻の生徒会選挙の一件で何かが決定的に終わってしまった奉仕部。そんな中新たな依頼を持ちこんだ新生徒会長一色いろは。

海浜総合高校とのクリスマス合同イベントの補佐を依頼に、一人で行動する八幡。ゆるゆると破滅へと動いている話し合いに解決策を見出せないまま、八幡は夏休みの林間学校で知り合った鶴見留美と出会う——。

昔のやり方でも救えたものは確かにある。ただ、それだけではきっと足りないのだ。
俺の責任。その答えを俺はまだ知らずにいる。

9巻前半は、8巻ラストを引きずりながらこれまでの自分の行いを振り返る八幡を重々しく描写されています。

これまでの八幡のやり方は、問題解決に犠牲は必要で、且つその泥を自分でかぶれるのであれば全く躊躇しない姿勢を貫いてきました。

そのやり方では上手く行かなかったのが8巻であり、4巻で救えた気になっていた留美の、変わらない現状を見たことでがんじがらめになっていく様子は痛々しく、変わらず繰り返されるパロネタもそれを誤摩化すかのようで、鬱々とした展開が続いていきます。

誰かを大切に思うということは、その人を傷つける覚悟をすることだよ

会議は停滞したまま、偶然遭遇した雪乃に最後通牒を突きつけられ、なにも出来ずに呆然と立ち尽くす八幡。そんな彼をすくい上げたのは、奉仕部顧問の平塚先生でした。

6巻、8巻と八幡のやり方に苦言を呈しつつもずっと見守ってきた平塚先生の『ヒント』。

「君は人の心理を読みとるのに長けているな」
「——けれど、感情は理解していない」
「——この時間がすべてじゃない。……でも、今しかできないこと、ここにしかないものもある。今だよ、比企谷。——今なんだ」

問はできた。なら、考えよう。俺の答えを。

平塚先生の『ヒント』から、停滞している会議の解決を雪乃と結衣に依頼する八幡。
素直に相談されたことに喜ぶ結衣とは裏腹に、頑な雪乃。

言い争う二人を見つめ、思わず涙をこぼしながら八幡がつぶやく。

俺は、本物が欲しい

この『俺ガイル』という作品は、八幡の一人称で語られながら、その本音が地の文でも吐露されることはほとんどありませんでした。
都合9冊めにして初めて語られる八幡の「本音」。

このシーンはそれでもあくまで抽象的に語られていて、八幡の言う「本物」とは何なのかははっきりとわかりません。
ところどころで語られるイソップ寓話の「酸っぱい葡萄」。このシーンを読んで、前巻で言われていた『自意識の化け物』と言う言葉がなんとなく腑に落ちたような気がします。

この言葉をきっかけに止まっていた奉仕部の時間は再び動きはじめ、改めて奉仕部として一色の依頼に臨むように。

「あなたの依頼、受けるわ」
「……あたしも手伝う」
「……助かる」

個人的に8巻ラストからこのシーンまでが、5巻〜6巻の文化祭スローガン決めまでの展開をなぞっているように見えました。
ただし対象が八幡→雪乃ではなく雪乃→八幡という違いはありますが。

ここからは奉仕部+一色で合同イベントに向けて動き出すのですが、9巻でメインで語られている話はここまででほぼ終わっていて、どちらかといえば以降はその殆どが次巻以降のヒキになっています。
特にディズ…………ディスティニーランドでのシーンは伏線のオンパレード。この部分は、8巻まで読んできた方にはぜひその目で読んで頂きたいので、詳細は省かせて頂きます。

結果として、合同イベントは2部構成にすることで成功を収めるのですが、なかでも顕著に描写されていたのは八幡と雪乃の緩衝剤としての結衣の存在。
ダブルヒロインの作品はどうしても主人公とどっちがくっつくかに目がいきがちなのですが、この作品はそういう方向にはこれからもシフトはしないんじゃないかな、とボンヤリ。
つくづく3人そろわないとうまく回らない連中なんだな、とよくわかります。

最後は部室で3人紅茶を飲むシーンで〆。前巻最後の章の副題が

「その部室に、紅茶の匂いはもうしない」

だっただけに、納得のラストでした。紅茶飲むのに湯呑みを選んじゃうガハマさんのセンスはパないと思います。

ここまでの総括とも言うべきエピソード

俺ガイルは大まかに3巻毎にエピソードが区切られていて、

1〜3巻は結衣の、
4〜6巻は雪乃のエピソードで、

その流れでいくと7〜9巻は八幡のエピソードになる、というのは予想に難くなかったのですが、
雪乃や結衣、そしてなにより葉山周りの描写が思いのほか語られていて、まさにここまでの総括ともいうべき巻だったと思います。

おそらく最終章であろう10巻以降は果して誰に焦点が当てられるのか(順当に行けば葉山か陽乃ですが……)、その中で『変わった』八幡がどのように動くのか、見ものですね!


総評

7巻から続いていた「八幡編」終了

7巻から続いていた「八幡編」終了。これまでずっと重苦しい空気が続いていただけに、カタルシスがある素晴らしい内容だったと思います。“破調の美”のくだりなど、奉仕部の火種はまだまだ見え隠れしているようですが……「それでも、彼の自己満足がせめて今この時だけでも幸福なものでありますように。」

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